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モニターレポート

  1. ヴァイオリン工房とWAVE Plus

ヴァイオリン工房とWAVE Plus

レザーマンを選んだ理由

ヴァイオリン製作という木工作業では数百年前と同じ手法を用いていますが、現代では必要に応じて最低限ですがパワーツールも使用します。工房では必要となるツールは揃っていますので、ヴァイオリン製作に携わるようになってもマルチツールという選択肢が思い浮かぶ事はありませんでした。

ただ、普段からツール数が多くなってしまわないよう「最低限のツール数に抑える」ことと「精度の高いツール」を使用することには意識しています。これは数が増えれば準備や後片付けにも悩まされるという経験を踏まえて辿りついた結果でした。

ツールの選択は作品の仕上がりを左右するものなので、ツール選びに対しては慎重になります。一言で表せば「少数精鋭のツール」を理想としてるのが現状です。

手道具を収納している工房の一角: 引き出しには細かいツール類、下段には楽器用木材をストックしています。

また、 少しでも作業効率が良くなるようにと各ツールが最短距離で手にできるように収納場所を工夫していますが、製作/リペア/メンテナンスに集中している時に限って「すぐそこ」にあっても椅子から離れて作業を中断されることに悩まされていました。
作業に没頭していると、あっという間にワークベンチ上がツールで埋め尽くされてしまうことが悩みで、時には木屑に埋もれたツールをそのまま捨ててしまったこともありました。

ニス修復中のワークベンチ: どうしても乱雑になってしまいます。

今では中心的な存在となったWAVE Plus: 主な必需品とともに

機能美を感じさせた佇まい

初めてWAVE Plusを手にした印象は、しっかりとした重量感でシルバー色に鈍く輝いており、前面と裏 面が全く同じと言えるほど統一されていて「美しい」ということです。
両面に刻まれている”LEATHERMAN WAVE+”の刻印まで同じという拘りにウットリとしました。 ツールに美しさを求めるのは、私だけではなくツールがお好きな方々には心当たりがあるのではないでしょうか。いわゆる機能美ですが、これはレザーマンについても例外ではありません。この両面とも同じデザインという事がとても気に入っています。
片面はストレートナイフで一方はセレーションナイフという違いがあり「手探りでは判断 出来ないのかな?」と感じました。ところが、さすがレザーマンです。触りながらじっくりと鑑賞しているとセレーション側には軸近くの背中にギザギザが刻まれており、手探りでも 判断できる事に気付きました。ボディを握って人差し指でなぞると判断がつきます。
例えば、開梱作業の際には、どのように切れば綺麗に開梱できるのかを考えながら、ポケットから”WAVE Plus”を取り出しつつ手のひらでボディを返しながら人差し指で探って セレーションを開くといった具合です。ナイロンバンド、麻紐や箱を閉じているガムテープ などをカットする際にはセレーションが安全で役に立っています。ガムテープのように幅のあるものは僅かにリカーブ状のナイフも効果を発揮します。デザイン性を損なわず実用性も確立されている事に気付き、とても感激しました。

因みに この事が判るまでは“LTJマーク”が刻まれている面がセレーション」と覚えるようにしていました。本題から逸脱しますが、レザーマンの初期のブレードやパーツは関市で生産されていたとのこと。ヨーロッパの楽器製作家の方々と話すと「刃物=Seki(関市)」という図式が成り 立っているようで、「関の刃物」も時には話題となります。この”LTJマーク”は保証の為という役割を担っていますが、レザーマンと関市の関係を知ると両社が特別な関係である証であり、誇りの表れと感じます。もし私が生まれや育ち、居住も海外で「レザーマンと関市の歴史や関係」を知れば「LTJマークが施されたレザーマン」を何とかして手に入れようと躍起になっていたかもしれません。

ヒストリーを知ると「誇り」を感じずにはいられない “LTJ” の刻印

それはさておき、WAVE Plusの各部を動作させながら使用状況を想像しつつ、各ツールをじっくりと鑑賞してゆきました。

ナイフは箱出し状態でしっかりと刃つけされています。ストレート定盤で確認するとナイフはごく僅かにリカーブ状である事がわかりました。そのため刃全体を大きく使うような場合には抵抗力が抑えられ、楽に扱えそうです。
セレーションについては直線でナイフと同じ刃渡りです。どちらも親指をかける事が出来る肉抜きがあり片手での動作もスムーズです。刃厚があり、本体への組み付けがしっかりとしているので刃がブレる事もありません。片手でロックを解除しナイフを閉じる事も可能ですが、安全のため両手で閉じます。
ヤスリは金ヤスリとダイヤモンドヤスリでブレードもフラットです。これもブレードがたわむ心配はなさそうです。金ヤスリ側の側面にもヤスリ加工が施されているのでエッジを使ったヤスリ掛けにも利用出来そうです。
WAVE Plusのヤスリと同じ大きさのヤスリは 持っていませんので頻繁に使う事となりそうです。ノコギリの刃は1mm厚で長さはありませんが、その結果たわみが生じ難い印象です。ちょっとした木材をカットする際には直線も維持できそうなので期待させられます。

本体を展開させるとプライヤーが現れます。開き具合も十分でマルチツールへの先入観は一瞬でなくなりました。立派なプライヤーそのもので先端の合わさりも完璧です。プライヤーの軸付近には154CM取替式ワイヤーカッターがありますが、これが安心感を最大限まで高めてくれます。取替式でなければ刃こぼれを心配して使う事に不安を抱いてしまいますが、WAVE Plusのワイヤーカッターは交換出来るので日常的に安心して使う事ができます。

これはWAVE Plusの良さだと断言できます。取替式と言えども刃厚は十分にあり強度的にも信頼できそうです。この機能は単体のプライヤーとして考えても画期的なアイデアではないでしょうか。

展開したハンドルの外側には定規の目盛りが刻まれているので、ちょっとしたサイズの確認には重宝しそうです。工房には計測具が豊富に揃っているのですが、工房から離れた場所で何かのサイズを簡易的に確認する場合は役立ちそうです。メトリック側に刻まれている数字は2からスタートしているので、確認のために定規を当てて計測してみるとハンドルの端を含めた数値である事が判りました。
じっくりと鑑賞した後は期待で胸がいっぱいでした。マルチツールではありますが、「選び抜かれた機能」を「本来の用途」として使う事が出来るという印象です。なお、これまで私が抱いていたマルチツールへの印象が一気に霞んだことは言うまでもありません。

ヴァイオリンの製作とWAVE Plus

ここからは日常業務にWAVE Plusを取り入れて、どのように利用しているのかをご紹介させていただきます。
ヴァイオリン製作という点でWAVE Plusが活躍する場面は、製作のサポート的な部分を担うものという事が判りました。

●電動工具のメンテナンス

工房にある据え置きの電動工具は糸鋸盤とボール盤です。糸鋸盤はツール収納部があるので不便は感じませんが、工房のボール盤は簡易的なものなのでテーブルの角度調整にはボルトを触らなければなりません。工房内でボルトを回す必要があるのはこの部分だけなのでレンチを取り出すことに面倒を感じていましたがWAVE Plusのプライヤーで気軽に調整が出来るようになりました。
ボルトにWAVE Plusを当てると、154CM取替式ワイヤーカッターはボルトへ干渉しないように適切な角度がつけられているので、ボルトをしっかりと掴むことができます。

幸いにもプライヤーの長さが干渉せずボルトを回す事が出来ています。

●弦の長さ調整

ヴァイオリンの弦はスチールの芯やナイロンの芯が用いられています。この弦を巻き上げるペグとペグボックスは楽器ごとに異なりますので、ペグボックス内に綺麗に弦を収めるには長さ調整も必要となります。これまではニッパーを使っていたのですが、長年の使用により切れ味が落ちていました。
今ではWAVE Plusの154CM取替式ワイヤーカッターが活躍しています。弦は芯材をフラット状にした各種金属(純金や純銀、アルミなど)で巻かれていますが、ペグで巻き上げる部分は繊維(糸)で巻かれています。それでもニッパーの切れ味は落ちる一方でした。
WAVE Plusの154CM取替式ワイヤーカッターで長さ調整のために弦をカットすると、繊維に刃をとられがちながらもカットできます。これは頻繁に使うツールですが、取替式なので心おきなく使用しています。

ヴァイオリンの弦で最も細いのはE線です。これはスチール製で弦の種類によっては純金
やプラチナメッキが施されたものなどがあります。この弦をカットする際は154CM取替式 ワイヤーカッターが本領を発揮し、カット面の綺麗さはもちろん「サクッ」と軽い力でカットできます。軽くハンドルを動かすだけでカットできるというニュアンスです。やはり切れ味が落ちても交換できるという安心感はとても大きなものです。

ワイヤーをカットする為のツールなのでスチールも易々とカットが出来るうえ、切れ味やカット面に関しても申し分ありません。

●小さなパーツを保持しておく場合

現代ではヴァイオリンを演奏する際に「肩当て」という楽器の保持ツールをヴァイオリンの裏に取り付けて顎と肩で楽器を支えます。高価な肩当てになると微調整が出来るようになっており、より演奏者の身体にフィットさせる事ができます。なお微調整が可能という事は可動部分も増えるので、そういった箇所に 追加パーツを組み込んだりもします。小さなパーツを左手に持ったパーツに取り付けるのですが、WAVE Plusのプライヤーは スプリング式ではなく、組み付けに隙間がないので任意の開き具合でパーツを掴んだまま手を離す事ができます。左手側でパーツの持ち方を変えたり取り付けやすいように角度調整したりする間も、プライヤーはワークベンチ上で小さなパーツを掴んだまま待機してくれています。プライヤーごと小さなパーツを手軽に拾い上げられるので、プライヤーが保持していてくれるとストレス がありません。これはリペアで小さな木片を使用する際にも紛失のリスクを軽減してくれています。

小さなパーツを保持

瞬間接着剤を使用するときにはピンセット代わりにも

専門ツールのセッティングではラージビットを替えるだけで調整が出来るので万能です。

WAVE Plusは他にも役立っていますが具体的な例として数例をご紹介させていただきました。これらの事柄はヴァイオリン製作そのものではありませんが、ヴァイオリン製作においては土台となる部分なので重要です。 どの作業に対しても最初の頃は力加減が解らず弱い力でWAVE Plusを扱っていましたが、要領を得るとしっかりと力を込められることがわかりました。また扱い方に慣れればピ ンセットのようにも利用できるので使用場面は広いと感じています。何より154CM取替式ワイヤーカッターは気安く使用でき、切れ味が良いのでちょっとした木材であればノコギリを取りに行く必要はありませんし、必要であればノコギリも「文字通り」手中にあるわけです。僅かにリカーブ状になっている直刃ナイフは幅の広い物をカットする時に刃の掛かりが良く重宝しています。コンボ刃ではなくセレーションと独立しているという点も使いやすいと感じています。

応用性が高いツール

それぞれのツールは工具として能力が高く、いろいろな専門工具の代用ともなります。謳われているツール数以上の活躍をしてくれていることは言うまでもありません。使い方次第で応用が効くのですが、それに耐える剛性を持っているので安心感は倍増しています。
マルチツールという先入観があったので応用が効くとは思いもしませんでした。
「手の平サイズの工具箱」は過言ではありません。

”WAVE”がLEATHERMANの代表作と知りましたが、 仕事ではもちろんのこと日常生活や趣味のクラフト、野外活動でも使え得るものなので代表作ということも頷けます。ワイヤーカッターが取替式でなければ、刃こぼれを心配してワイヤーカッターを気軽に使うことが出来なかったかもしれません。
しかしWAVE Plusであれば刃こぼれの心配は不要で、ご紹介した通りワイヤーに限らず「ちょっとした硬さのあるもの」でもハサミのように使用できるので、自然と利用する機会が増えました。

折りたたむために可動部が多く存在しているにも関わらず「使用時には支障をきたさない」事からそれぞれの機能を本来の用途に対して十二分に発揮できていますし、工房での作業効率も明らかに上がりましたので期待以上でした。最初に抱いた不安感は全てが消え去ったのです。
そしてWAVE Plusは既に少数精鋭への仲間入りを果たしています。

インドア派の私ですが、今では「ツールを携帯出来ることのメリット」を享受させていただいています。
また、使い勝手の良いツールとは?ということをWAVE Plusは考えさせてくれました。
機能と強度そして正確であることはもちろんですが、それだけでは「良いツール」で終わってしまいます。それらに加えて質感や機能美、操作感が優れていてこそ「使い勝手の良いツール」となるのではないでしょうか。
無意識のうちにそういったツールを求めている自分に気づく事ができました。
レザーマンはまさに「使い勝手の良いツール」だと言えます。

ヴァイオリン工房 IL VIOLINO
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