モニターレポート

  1. ツールの比較レポート No.3

ツールの比較レポート No.3

試したいことは色々あるが、まずは基本的なこと。
地味だが大切なこと。
それはグローブをはめたままでのハンドリング。
災害現場は様々なものが散らかっている。
ガラス片や金属片、木切れさえ鋭くとがっている。
普通の軍手ではまったく役に立たない。
小さなガラスの破片が軍手の織り目を通り抜け指先に刺さり、しばらく苦しんだ仲間がいた。
だから丈夫なグローブは欠かせない。
分厚い革のグローブか手のひら側が全面ゴムで補強された物を使う。
そして、洪水災害の現場のような場合は、内側にさらにゴム製の使い捨ての手袋をはめる。(感染症対策のために)
蒸れる上に、細かな作業がしにくいが下水もあふれている状況では仕方がない。
グローブの二重重ね。
指先の自由はかなり奪われる。
その状況で果たして使いやすのかどうか。

まずは革のグローブをはめて各ブレードの開閉。
各種のブレードは本体サイズに合わせて多少なりともPSTより大きくなり、また突起も追加されているため行いやすい。
ロックの解除も良好。
PSTより進化したと言える。
次に手のひら側がゴムで全面補強されたグローブで同じ事をやってみる。
同じ大きさのV社のマルチツールよりは行いやすいのは確かだがもう一ひねり欲しいところだろう。
(V社製はこのグローブでの操作性は最悪だ。上品なネイルマークでは役に立たない)

比較的大きなナイフ、ウェーブエッジ、鋸、鑢は良いとして、その他のドライバー、リーマー、缶切りのブレードが起こしにくい。
理由は簡単。爪を引っ掛ける突起が小さすぎるのだ。
おそらくデザイン上の問題だろう。
たたんだ時にハンドルからはみ出さないようにするため突起部もハンドルの面から下に入ってしまう。
グローブをはめた状態での操作はなかなか難しい状態になる。
突起を左右のハンドルで互い違いに配列し、大型化すればこの問題はかなり解消されると思うのだがどうだろう。
設計者は素手での使用しか考えていないのだろうか。
大型化したところでそれにかかるコストはわずかだと思うのだが素人考えだろうか。

次に強化されたワイヤーカッターをテストしてみる。
PSTの出来が良かっただけに期待も大きくなろうというものだ。
私がこだわるのは先の震災での経験によるものが大きい。
記述したように人の命がかかってくる。
又、避難所で三日も暮らせばその有り難さも分かろうというもの。
伝言板を吊るす為に更衣室のワイヤーハンガーをばらして使うとか、給水車に水をもらいに行くための台車に板切れを括り付けるとか色々と役に立つ。
まず手始めに普通の針金(直径2mm)、当たり前に切れる。 そりゃそうだ。
スーパーなツールで切れなければクレームものだ。
次にワイヤーハンガーを切ってみる。
当たり前だが PSTより良く切れる。
20年分の進化は確かにある。
少し頭をひねるのはレギュラーカッター部。
説明書を見ないと見落としそうな位置にある。
本体には御丁寧にここがレギュラーカッタ—部だと矢印まで刻印してあるが、普通この位置では使わないだろう。
もちろん直径2mm程度の針金は問題なく切れるのだが位置が微妙だ。

次に螺子(ネジ)を切ってみる。これは同じ太さの釘より硬い。
普通ペンチで切ろうとは思わないものだ。
もしかしたら変形してしまうかもと不安になる。
しっかりとハードワイヤーカッタ—部の奥に鋏み体重をかける。
プツッと鈍い感触で切れたようだ。
飛んで行った先っぽを探す。
切断面は綺麗だがレザーマンは大丈夫か?
大丈夫だ、変形も刃欠けもない。
安心した。
ところでハードワイヤーカッター部は別パーツでしかも交換パーツが別売りされている。
実に有難い話だ。
一度でもワイヤーカッター部をつぶした人間には福音だ。
これさえあれば潰れた刃先をシコシコと削らなくて済む。
これまではワイヤーカッター部の破損は我慢するしかなかったが、これで我慢せずに済む。
さらに釘も切ってみた。
螺子(ネジ)を切った後では特に言うほどではないが、こちらもスムーズに切断。
実際には螺子や釘を切断することはそれほどない。
しかしそれでもこの切断力はすばらしい。
あとは自分の握力次第だ。

次に鋸(ノコギリ)のテスト。
手近にあった板切れを切ってみる。
PST にはなかった機能だ。
比較対象は他社のツールナイフか折りたたみ鋸。
新品なので確かに良く切れる。
手持ちの折りたたみ鋸と比べても遜色ない。
切断面も綺麗だ。
ロックがあるおかげで不意にたたまれることもない。
確かにこの手の物の中では良く出来ている。
後は長さだが、これは仕方がない。良く出来ているほどあと少しが気になってしまう。(駄目なものなら気にならないのだが)。